三角折りを止めました。
この度、リンアンはトイレットペーパーの三角折りを止める事にしました。
実は数日前から止めていたのですが、スタッフの賛同も得られましたので、正式に止める事にしました。
私が、始めてトイレットペーパーの三角折りを見たのは、35~6年前のサンフランシスコのホテルでした。
外出から帰ると見慣れない光景が!
トイレットペーパーの端が三角に折りたたんでカバーに挟み込んであったのです。
当時、日本では三角折りは見た事も聞いた事も無かった時代です。
「えっ! 誰が部屋に入り込んだんだ!?」
っと、まずは不法侵入者を疑ったのです。
でも、不法侵入者なら、わざわざこんな丁寧に、そして証拠を残すような事をするはずが有りません。
「それなら誰が?」
その回答はすぐに見つかりました。
私の部屋に入れる、入るのはクリーニングスタッフだけ。
クリーニングスタッフが、「私がきれいに掃除しましたよ。」という合図で三角折りをしてくれたのに違い有りません。
そのクリーニングスタッフ以外に、わざわざそんな面倒な事をする人はいないでしょう。
という事は、三角折りがされているという事は、そのクリーニングスタッフが心を込めてクリーンアップしてから、私が初めてそこを使うという事。
誰も使っていない、きれいなトイレで用を足せるという事なのです。
非常に良い気分で用を足しました。
次の日のチップをはずんだのは、言うまでも有りません。
ところが日本に帰って数年たったころ、あるカーショップのトイレで見た貼り紙には、こう書かれていたのです。
「三角折りにご協力ください。」
これは最悪の貼り紙です。
お客様が自主的に三角折りをされるのならともかく、本来、お店がしなければならない三角折りを、お客様に強要するって、信じられない出来事でした。
それでは、「クリーンアップしてから誰も使っていない、きれいなトイレなんだ。」という感動が、全くありません。
それにお客様が次の方のためにしていただいたにしても、きれいに手を洗ってからしていただいたにしても、「手を洗う前に、これ、したんだよね。」という不快な思いをする方は、少なからずいらっしゃいます。
「次の方のために。」と思ってしたことが、次の方に不快な思いをさせる事になってしまう場合がある。これは覚えておいていただきたいことです。
あの三角折りは、基本的にクリーンアップしたスタッフが、誰も使っていないトイレだという目印として折っているのです。
ところが現在、使った方が三角に折るようになってしまって、その意味が全く無くなってしまいました。
リンアンのトイレ掃除は基本的に私の担当です。
ですから、私は20年間、「まだ誰も使っていません。」という思いを込めて折ってきました。
しかし、その思いが伝わるのは、開店直後に入られたお客様だけです。
私が、「まだだれも使っていませんよ。」という思いで折っていても、1~2時間後に入られた場合、その方が最初でも、「手を洗う前にこれ、したんだよね。」という思いをする方はいらっしゃるのです。
この矛盾に悩んできましたが、そう思われる方がいる限り、もう、三角折りは止めました。
写真のように、少しペーパーを出すだけで、次の方は取りやすいのです。
「次の方が取りやすいように。」という事であれば、これだけで十分なのです。
そしてこれなら極めて自然で、誰も嫌な思いをせずに済むのです。
わざわざ手間をかける意味は、そこにはなにも有りません。
わざわざ手をかけて、お客様に嫌な思いをさせたくは有りません。
という事で、リンアンは三角折りを止めさせていただくことにしました。
決して手を抜くために止めたのではなく、お客様に不快な思いをさせないために、三角折りを止めました。
もし、この引き出すだけが普及し、誰も三角折りをしなくなった時には、リンアンは三角折りを復活させます。
その時には、「まだだれも使っていませんよ。」という思いが伝わりますので。
「私が最初だ。」といういい気分を味わえるのは、最初のお客様だけですが。