紅茶専門店 ティーズリンアン 店主のブログ

紅茶専門店の店主が語る 紅茶の真実

コーヒーの道具で紅茶を淹れてみた

   

コーヒーのペーパードリップで紅茶を淹れてみました。

というのも、コーヒーにこだわりのあるお店でも、紅茶が美味しくないお店って、多いんですよね。
そんなに出ない紅茶のためにティーポットを準備するのもなんだし。

「そうだ!それなら手元にあるコーヒーの道具で紅茶を美味しく淹れる方法を見つけて教えてあげればいいじゃないか!」という事で試してみました。

ところがこれが案外難しい。

まず、コーヒー豆の場合、カップ120cc に対しての豆の量は 10g くらいですが、紅茶の場合 2.4g 程度。
圧倒的に量が少ない。
そして、CTC製法の紅茶ならまだしも、OPタイプのフルリーフだとお湯の保持力が殆どありません。
コーヒーはミルで挽いて有りますから、非常に細かく、お湯を保持してくれます。
そして量が4倍あるので、保持するお湯の量も紅茶に比べて多いのです。

だから、コーヒー豆に少しのお湯をさして、蒸らし時間を待つ事が出来るのですが、紅茶の場合、蒸らす時間を待つことなく、お湯が落ちて行ってしまいます。
結果として、茶葉の表面の成分しか抽出されず、表面的な、深みが全くない、ペラペラの味しかしない紅茶になってしまいました。

ならば、少しのお湯だけを何回も注いで、強制的に蒸らし時間を稼いでみたらどうだろう?

と、やってみたのですが、これが面倒で、時間がかかる上に、味が安定しません。
そりゃそうですね。
この方法のエキスパートにでもならない限り、この淹れ方で美味しい紅茶を楽しむのは難しそうです。

美味しいコーヒー屋さんに、簡単に美味しい紅茶を出していただこうと思ったのに。^^;;

そこでハタと気づいたのは、「だったら、カップにお湯とティーバッグを入れてほっておけばいいじゃないか!」

何もコーヒーの道具に拘らなくても、カップはどんなコーヒー屋さんにも有るわけですから、ティーバッグで十分なはずです。
汲みたて沸かしたてのお湯を使って、しっかり蒸らせば、特別の道具も無しに美味しい紅茶を楽しめるんですから。

強いて言うと、この、「汲みたて沸かしたてのお湯」が難しかもしれません。
コーヒーは、いつも沸かしているお湯で淹れる文化のようです。
その辺りが紅茶の文化と少し違うところです。

汲みたて沸かしたてのお湯と、ずっと沸かしていたお湯では、お湯の味が全く違います。
その、汲みたて沸かしたてのお湯を準備してもらうのが、コーヒー屋さんで美味しい紅茶を淹れるためにはちょっと工夫がいるところかもしれません。

だったら、いっそ。水出しで紅茶を淹れてもらった方がいいのかな?

という事で、そのきっかけを作っていただいたコーヒー屋さんには、水出し紅茶をプレゼントしてきました。

コーヒーと紅茶の抽出を比較すると、紅茶の抽出の方が圧倒的に楽に、簡単に美味しい紅茶を淹れられます。
コーヒーの方が遥かに難しいです。

その結果、コーヒーは美味しくいれるための様々な道具が工夫され、発展してきましたが、紅茶は、ティーポットから殆ど発展してきませんでした。
ティーポットが無くても、カップひとつだけでも美味しい紅茶が飲めるからです。

汲みたて沸かしたてのお湯を使ってじっくり蒸らす。
濃くなったら、お湯かミルクで割って飲めばいい。

美味しい紅茶の淹れ方はこれだけです。
実に簡単です。

因みに、エスプレッソマシンを使って、エスプレッソ風に淹れるのは有りです。
「きっと美味しい紅茶が淹れられるはずだ。」と思っていたのですが、ある時、卸し先のバリスタさんが「これ、飲んで欲しいんですが。」と、差し出してくれたのが、エスプレッソマシンで淹れた紅茶でした。

当然、エスプレッソばりの、濃い紅茶が出来ます。
必要な茶葉の量は紅茶はコーヒーより少ないのですから、エスプレッソよりもさらに濃い紅茶がはいります。
それをお湯で割って飲んでみると、本当に美味しい紅茶でした。
そしてそれは美味しい紅茶の濃縮エキスですから、ケーキ材料などにも使える非常に面白い紅茶エキスでもあるわけです。

紅茶の新たな可能性を開く分野が見えてきています。

リンアンにはエスプレッソマシンは有りませんので、これ以上突き詰める事が出来ないのが残念です。

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