紅茶専門店 ティーズリンアン 店主のブログ

紅茶専門店の店主が語る 紅茶の真実

国産紅茶グランプリ 2015 を終えて

      2015/12/24

今年の紅茶フェスティバルで、「国産紅茶グランプリ」を開催させていただきました。

紅茶フェスティバルの中のイベントですが、これはそれだけの価値あるイベントですので、別記事として取り上げさせていただきます。

ほんと、凄かったです。
素晴らしいグランプリになったと自負しています。

ご出品いただいた紅茶は、なんと、70種類。
締め切り1か月前には10点ほどしか集まらず、「10点では予選もできず、グランプリって言ったって格好付かないぞ。」って、焦りはじめ、2週間前でも20点ほど。^^;;
ところが締め切り直前に駆け込みの申し込みが凄い。

今度はどうやってこれだけの紅茶を予選審査するんだって焦り始める始末。

それでもなんとか予選を行い12点を選んで紅茶フェスティバル当日の決勝戦に出しました。

そのレベルの高さが凄かったです。
どれがグランプリを取ってもおかしくない、世界の紅茶と比べても遜色ない一品ばかりでした。

今年は国産紅茶にとって素晴らしい1年でした。
それは私にとっては、4月、京大名誉教授の坂田先生から送られてきた紅茶で始まりました。

飲ませていただいた紅茶にびっくりしたのです。

長年、「日本の紅茶は絶対にダージリンを超えることが出来るのだから。」と言い続けてきた、まさにその紅茶だったのです。

リンアンではこの春、マーガレットホープ茶園と、プッタボン茶園の2つのファーストフラシュを輸入したのですが、その国産紅茶はまさにその間に入れておかしくない紅茶だったのです。

「やっと日本の紅茶がダージリンに追いついた!」そう実感できる瞬間でした。

坂田先生には、「私はその2つを超えていると思います。」と言われてしまったのがなんですが。^^;;

でも、日本の紅茶が世界に追いついた。そして超えようとしている。
それが実感できた年でした。

もちろん、その紅茶を作った静岡川根本町の高田さんにも、強く国産紅茶グランプリへの出品を勧めさせていただきました。
正直、「高田さんの紅茶が出てきたら、グランプリは確実だね。」と思っていたのです。

ところがところが、高田さんクラスの紅茶がバンバン集まってしまったのです。

「日本って凄い!」「日本の紅茶! 凄いよ!」

そんな感じです。

結果的に高田さんの紅茶は銀賞。

ではグランプリは誰か?

グランプリは愛知県豊橋市の後藤さんが取られました。

でも、後藤さんはこのグランプリでは満足していないはずです。
というのは、おととし、もっとすごい紅茶を作ってしまったからなのです。

その紅茶は、ネパールジュンチャバリ茶園の手揉みの紅茶、「HRHT」を超える味わいでした。
そりゃ、それは凄かった。

でも、後藤さんはそれが再現できなくて悔しくて仕方がないのです。
後藤さんがそれを再現できたとき、後藤さんは世界を超えるレベルの製茶技術を身に付けているはずです。

高田さんも凄いです。
高田さんは、「この紅茶はいつでも再現できます。」と言われるのです。
つまり、高田さんが本気になってグランプリ用の紅茶を作ったら、とんでもない紅茶が出来上がる事になります。凄いです。

審査委員長賞の益井さんの紅茶。これも実はすごい。
この紅茶、益井さんがごく普通にいつも売っている紅茶なのです。
いつもの紅茶をそのまま出してきて審査委員長賞。
「いつもの紅茶」がこのレベル。
さすが私が一押ししてる益井さんです。^^;;

準グランプリの金川製茶 比嘉さんも凄かった。
今年は決勝進出を1業者2点までに制限させていただいたのですが、その制限は比嘉さんの紅茶が3点になってしまうためだったのです。

日本の紅茶の発展のためには、多くの生産者に賞を取っていただきたい。そんな思いが1業者2点までにさせていただいた理由なのですが、それが無ければ3点が決勝に残った比嘉さんの実力。これはタダモノじゃありません。

準グランプリの亀山kisekiの会の紅茶は、これはもう、準グランプリで当然の紅茶だと思います。
日本の紅茶が世界で高く評価されていた時代の紅茶をそのまま再現しているのですから。
それが順当に準グランプリを確保できてほっとしています。
逆に言えば、それほど今回の国産紅茶グランプリはレベルが高かったのです。

もう一つ、銀賞ながらはっきりと記憶に残っているのが、ハサマ共同製茶組合の山中さんの紅茶です。

この紅茶を初めて飲ませていただいたのは、三重県の紅茶の審査会でした。
数多くの紅茶の中で一つだけとびぬけて良かったのが、山中さんの紅茶でした。ネパール ジュンチャバリ茶園の手揉み紅茶レベルの香りを出してきていました。それは素晴らしい紅茶でした。

「発酵が進まないから失敗だと思っていた。」と謙遜している山中さんですが、凄いのは、春でも夏でも、全く同じと言っていい品質の紅茶を作り出している事です。
つまり、山中さんは現在の紅茶の世界傾向、今の消費者がどんな紅茶を望んでいるかを知らないだけで、確実に美味しい紅茶を作り出す技術を持った方だという事です。

今回のグランプリの銀賞だけでなく、今年は紅茶フェスティバルのバザールにも出店していただいて、消費者の、紅茶好きな方々の感想を直接聞いていただきました。
これによってどこに目標を置けばいいかが分かった山中さんは、これからの国産紅茶の世界では光った、知られる存在になる方でしょう。

そんなこんなで、今年の国産紅茶グランプリは本当にすごいグランプリでした。
まさに日本の紅茶が世界に追いついた事を証明する大会になったと思います。

そして来年の国産紅茶グランプリはきっと、日本の紅茶が世界の紅茶を超えた事を実感できるグランプリになると思います。

(写真は特別審査委員枠で審査に加わる 駐日スリランカ大使のダンミカ ディサーナーヤカ氏)

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