ガレット デ ロワの物語
2016/02/20
1月のケーキ、ガレット デ ロワは、さまざまなドラマを生み出すお菓子です。
フランスで1月6日の公現節に食べられるアーモンドクリームを入れて焼き込んだパイのガレット デ ロワ。
その中に入れられた一つの小さなフェーブ。それが当たった人はその日一日が王様になれるという伝統のお菓子。
リンアンでも様々なドラマが生まれてきました。
だいぶ前の事ですが、良くいらっしゃっていた素敵なご夫妻がリンアンのカウンターで待ち合わせをされていたのです。
その日のガレットは残り二つ。しかもその日がまだフェーブが出ていません。
閉店も近い夕刻。先にお越しいただいたご主人はガレットをつつき、私達とおしゃべりを楽しみながら奥様を待っていらっしゃいました。
しばらくしていらっしゃった奥様に、「今日はまだ、フェーブが出てないからね。」「だから君か私のどちらかが王様だから。」と。
奥様もフェーブを楽しみにガレットを召し上がられて。
話も盛り上がってきたところでご主人が、「おっ! 出て来た。」「今日は私が王様だ。」
残念そうに、でも嬉しそうにご主人を見つめる奥様。
でも実は、ご主人はフェーブが入っていたのを知っていたのです。
ナイフに当たった微かな感触でフェーブの存在を知ったご主人は、奥様の楽しみのためにそこでナイフを止め、奥様を待っていらっしゃったのです。
奥様にもガレットのわくわくを楽しんでもらうために。
それもごく自然に、カウンターの中にいる私達にもそんなそぶりを全く見せず、静かに自然に。
一年分の幸せをいただいた夜でした。