紅茶専門店 ティーズリンアン 店主のブログ

紅茶専門店の店主が語る 紅茶の真実

紅茶は割って飲むもの

   

実は、「紅茶は割って飲むもの」なのです。

「紅茶って淹れるのが難しい。」とはよく聞くのですが、紅茶屋を始めて約20年。結論から言えば、「紅茶なんて簡単だ。」としか言えません。
セミナーでも、「ちゃんと茶葉の時間を計りましょう。」とか、「きちんと時間を計って」とか、私も言っています。
でもしかし、私が家で紅茶を淹れる時は茶葉の量も測らなければ、時間も全く計りません。
それでも美味しく飲めてしまいます。

「紅茶なんていい加減に淹れても美味しい飲み物」なんです。
淹れ方なんて本当に簡単です。

「そんなこと言われても、ちょっと油断すると渋くなるし。」と言われそうですけど。^^;;

これは私が普段お店で(と言っても最近は混む時だけですが)紅茶を淹れ慣れていて、感覚的に美味しい抽出条件が身についている、という事はもちろん有ります。
でも、子供達がいいかげんに淹れても美味しいのです。

何故か?

これはいろんな要素がたくさん有って、いろんな要素が紅茶を美味しく淹れられるように準備されていて、その上で「いいかげんに淹れている。」からなんですが、それでも茶葉の量も測らず、茶葉は入れっぱなしで、ティーポットはテーブルの上に置きっぱなし。でも美味しい。

その紅茶を美味しく飲むためのひとつの方法が、「紅茶は割って飲む」という飲み方です。

紅茶は渋くなったらお湯で割って、好きな濃さにして飲めばいいのです。
何も問題はありません。

「えっ!?」と思われる方が多いと思います。
でも、元から「紅茶は濃く淹れて割って飲むもの」なのです。

イギリスのティールームへ行けば必ずお湯が出てきます。
多くの日本人は、「そのお湯は2煎目を飲むためのお湯だ」と思っています。
でも、そのお湯をティーポットに入れちゃ駄目ですよ。絶対にしちゃいけません!

そのお湯は、「濃い紅茶を割って飲むためのお湯」なのですから。

イギリス人は基本的にミルクティーを飲んでいます。
そして美味しいミルクティーを楽しむためには、ミルクに負けないように紅茶は濃くなっていなければなりません。ですからイギリスでは基本的に日本人が美味しいと思って飲む紅茶の2倍くらいの濃さになるように茶葉を入れています。
だからイギリスでは紅茶が濃いのです。
だからイギリスでは美味しいミルクティーが楽しめるのです。

でももちろんイギリスでも、少数ですがストレートで紅茶を楽しみたい人はいるわけです。
その人のためにお湯が出てくるのです。

ですからその出てくるお湯はポットに入れるためのお湯ではなく、カップの紅茶を薄める、カップの紅茶を割るためのお湯なのです。
結果的にイギリス人は、「濃い紅茶をお湯で割るか、ミルクで割るか」して飲んでいるわけです。
つまり、「紅茶は割って飲むもの」なのです。

これが分かるだけで紅茶の淹れ方はとっても簡単になります。
心配だったら茶葉を少し多めに入れればいいのです。そして濃い紅茶にして、自分が美味しいと思う濃さまで薄めて飲めばいいのです。
有るときはミルクで割って、そして有るときはお湯で割って、氷で割ってアイスティーにしたっていいのです。
紅茶の飲み方は自由です。
もっと自由に、そしてもっと美味しく飲めばいいのです。

写真はロシアのサモワールです。
愛知大学愛知大学国際コミュニケーション学部教授 河野眞先生のコレクションを写真に撮らせていただきました。
このサモワールは真ん中に円筒が入っていてその周りをお湯が囲む構造となっています。
そしてその筒の中に炭を入れてお湯を沸かすのです。
円筒の上に受け皿がありますが、お湯を入れたティーポットをここに置きじっくり蒸らします。
そうするととんでもない濃い紅茶が出来上がります。
それをロシアの人たちはカップに少し入れてまた蛇口からお湯を注いでお湯で割って楽しんでいるのです。

今、紅茶は多くの国々でイギリス式の淹れ方で楽しまれています。
ロシア式の淹れ方は中央アジアからトルコ辺りまで広がっています。
つまり、世界の殆どの国で、「紅茶は割って飲まれている」のです。

日本には煎茶の文化があり、「お茶を割って飲むなんて!」と思われていますから、「紅茶を割って飲むの???」と思われてしまっていますが、実は世界中の殆どの国で「紅茶は割って飲むもの」なのです。
紅茶をお湯でもミルクでも割らずに、そのままストレートで飲んでいるのはもしかしたら日本だけ(では決して無いでしょうが、それに近いレベル)かもしれません。

「濃ければ好きな濃さにお湯で薄めて飲めばいい。」これを知っているだけで紅茶の失敗のほとんどが無くなります。
紅茶はもっと自由に飲んでいいのです。

ただひとつ、「薄い紅茶は濃くならない。」これだけは思えておいたほうがいいかもしれません。

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