マスカテルはやっぱり
インドの取引先がやってきました。
毎年来てくれるのですが、持ってきてくれたサンプルを試飲しながら、「これはライトマスカテルで。」と言うので聞いてみました。
「モスカテルワインを知っている?」と。
すると彼は、「もちろん知っている。大好きでよく飲んでるよ。」と答えたのです。
私にとっては意外だったのですが、彼は日常的にモスカテルワインを飲んでいたのです。
であれば、当然ですが、紅茶のマスカテルとワインのモスカテルの味わいは連動しているはずです。
で、いろいろ聞いてみたのです。
まずは、「モスカテルワインは赤が好きか?、白が好きか?」。「赤の方が好きだ。」。
という事で、彼はモスカテルは赤の方が美味しいと認識しているという事になります。
実際に飲んだ感じでは、少ない経験でいう事ははばかられるのですが、白はまるでぶどうジュースをアルコールで割って飲んでいるような感覚で、コクというものがほとんど感じられません。
が、赤はどっしりとして、甘みからくるコク、ボディーの強さがしっかり感じられて旨味を感じます。
次に聞いたのは、「紅茶のマスカテルというのは味と香りと両方あるけど、主に味の意味合いの方が強いと思うんだ。」「そうだよ。」
さらに本質の質問へ。「マスカテルって、赤のモスカテルワインのような強さのフルボディーの事を言うと思うんだけど。」「その通りだ。」。
これで決定です。
2007年にコルカタで飲ませていただいた「今年最高のマスカテル」と、「赤のモスカテルワイン」が完璧に繋がりました。
インドの紅茶関係者はモスカテルワインをよく知っていて、赤のモスカテルワインのコク、強いボディーを紅茶のマスカテルの基準として認識しています。
あくまでも「フレーバー」は、「風味」であり、「香り」では有りません。
そして「マスカテルフレーバー」は、「赤のモスカテルワインのフレーバー」であり、その主な要素はマスカットの甘さに起因する強いボディーであり、「フルボディー」と呼ばれるような強さを持った紅茶がマスカテルなのです。
そしてそれはライト化という紅茶の世界的な潮流によって極少なくなっています。
しかし、「マスカテル」という言葉自体は最高級のダージリンを示す言葉として重要視され、珍重され、本来のマスカテルの意味を外れて商業的に利用されるようになってきています。
それがまさに目の前にある「ライトマスカテル」と名付けられた紅茶でした。
「昔だったらこれにはマスカテルの名前は付けなかっただろうなぁ。」と思われる味わいでした。
しかし、言葉というものはその意味が徐々に変化していくものです。
「マスカテル」が「モスカテルワイン」から離れて行っても、それはそれで受け入れていくしか無いのだと思います。
まぁともかく、「マスカテルの本来の意味」がまだ残っている時代にいられた事を喜びましょう。
この先はいろんな「赤のモスカテルワイン」を試し、「本来のマスカテル」の「フレーバー」を確かめながら。