ドレスコード
ドレスコードはちゃんと守りましょう。
当たり前の事なんですが、意外に出来ていないのがドレスコードを守るという事ではないでしょうか。
「ドレスコードが有るなんて堅苦しい。そんなの嫌だ。」なんて思っていないでしょうか。
そもそも、ドレスコードは何のために有るんでしょう?
かくいう私も、ドレスコードというものの存在を知った時には、「なんて面倒くさい。そんなもの。」と思っていました。
ところが、紅茶の仕事をするようになり、そうも言っていられないようになってきたのです。
インドは世界最大の紅茶産地なのですが、インドの経済規模からすれば紅茶の生産額は極僅かですが、スリランカはそうはいきません。
小国のスリランカにとって、紅茶の生産はGDPの中で、そして外貨獲得のためには欠かせないものとなっています。
そのため、私のような地方の紅茶屋でも、大使館のパーティーに呼んでくれることが有るのです。
その中でも、2007年にスリランカ茶業140周年記念パーティーに呼んでいただいたときの事です。
事前にFAXで、「パーティーするけど来る? 来るなら招待状出すけど。」と連絡が有りました。
海外ではパーティーは基本的に夫婦で出かけるものですから「妻と一緒に行くよ。」と返事をしておいたのです。
そして招待状が届いてビックリ!
招待状のドレスコードは、「Formal」。
「えっ!」「大使館主催のパーティーでドレスコードがFormalなんて、何着ていけばいいんだ????」
頭の中はパニック状態。
こういう時はネットで調べるしか有りませんので、それなりにフォーマルな装いとは何かを調べまくりました。
夜のパーティーですから、基本的にはタキシードです。
タキシードにブラックタイ(黒の蝶ネクタイ)シャツは当然スタンドカラーのシャツでしょう。
それにカマーバンド(お腹に巻くベルト)とカフスボタンに、ポケットチーフが有ればほぼ完ぺきにフォーマルです。
ただ、これを一式、それも有る程度ちゃんとしたものを揃えようとするとそれなりの金額がかかります。
でも、このうちの一つでも身に着けていれば、略フォーマルとは見ていただけるようです。
これ以外でも、民族衣装で有れば基本的にフォーマルと見ていただけます。
茶の湯をしていましたので、着物はいくつか持っているのですが、持って出かけるのが大変です。
そこで、作ったばかりのスーツを着て、スタンドカラーのシャツに蝶ネクタイ。
カフスにポケットチーフも揃え、「まぁこれくらいしておけば許していただけるだろう。」と、出かけました。
で、行ってみると、ほとんどの方がスーツ姿。ごく普通のビジネススーツです。
大使は民族衣装でしたからフォーマル、そして司会のウィッキーさんも流石にタキシードを着こなしてフォーマル。
他の皆さんは女性の一部の着物姿を除いてフォーマルなドレスコードで来ている人は殆どいません。
大使館の人も、日本人がスーツで来ることが分かっていますので、合わせてスーツを着ていらっしゃいました。
この辺りはお客様に恥をかかせないための配慮ですね。
来客の殆どは紅茶業界の大役の方ばかりです。大手の紅茶会社の代表だったり、関係省庁の担当部長だったり、紅茶協会の重鎮だったり。
そんな中に地方の名も無い紅茶屋がいるんですから、初めは隅っこでひっそりとしていました。
でも、よくよく見ると、招待状のドレスコードに一番近いのは私じゃないですか!
「という事は、堂々としてていいんだ!」
それに気づいてからは大使にも平気で挨拶に行くし、料理も取り放題。
今まで隅っこで気を遣って小さくなっていたのが、思う存分パーティーを楽しめたのです。
つまり、ドレスコードというのは主催者が、「こんな雰囲気でパーティーするからね。」と、教えてくれているのです。
だからドレスコードを守っていけば、そこには楽しいパーティーが待っているのです。
ドレスコードを守るだけで、パーティーは2倍に、3倍にも楽しめるのです。
そのためにドレスコードが有るのです。
ドレスコードは堅苦しい物では有りません。
ドレスコードは楽しむために書かれているのです。
だから、ドレスコードを守りましょう。
というより、ドレスコードを守れば、パーティーに出かける前からパーティーが楽しめるのです。
ですから、ドレスコードに合わせて着ていく服を選ぶときからパーティーを楽しんでしまいましょう。
そのためにドレスコードが有るのですから。